最近、テレビを見ていて「手紙ならではだなぁ」と思ったエピソードが2つありましたので、ここに記録しておこうと思います。
朝ドラ『あんぱん』のエピソード
『あんぱん』はやなせたかしさんの歌のとおり、勇気が湧いてくるドラマで大好きです。終わりが見えてきて、少しさみしくなってきました。まだまだ見ていたいと思わせてくれるドラマです。
さて、最近、主人公のぶのお母さんが、若くして亡くなった商社マンのお父さんがお母さんに出張先から出した手紙をのぶたちに見せ、お父さんが手紙をくれた場所を自分も訪ねていきたいと言うシーンがありました。手紙の消印を追っていけばお父さんの足跡も辿れます。お父さんの直筆でしたためられた手紙を携えていけば、お父さんと一緒に旅している気持ちにもなれますよね。実態のある手紙ならではだなぁと感じ入りました。
日航機墜落事故の特集番組で語られた坂本九さんのエピソード
もう一つの手紙ならではの話は、日航機墜落事故の特集番組の中で知りました。この事故で歌手の坂本九さんが亡くなりました。坂本さんには2人の娘さんがおりますが、事故が起こったときはまだ小さかったそうです。娘さんは年齢を重ねていくにつれて、お父さんというより有名人として知るお父さんにどこか実態が薄れていく感覚があったそうです。しかし、事故から16年経った2001年のある日、坂本九さんがしたためた手紙が2人の娘さんそれぞれに届きました。それは、つくば万博が行われた1985年に広島中央郵便局が21世紀に届けるタイムカプセル便のイベントを行い、それに坂本九さんが参加して書かれたものだそうです。父の筆跡に「本当にいたんだ」と曖昧になっていたお父さんの確かな存在を感じたとのこと。これは手書き文字の力にほかなりません。直筆だからこそ、お父さんにしか書けない文字だからこそ、そう感じられたのではないでしょうか。もし印刷されたものだったら、メールで送られてきたら、ここまで実感できたでしょうか。手紙だからこそ可能になるすてきなサプライズ。もちろん、この手紙を書いたとき、坂本九さんは自分の生涯があのような悲惨な事故で閉じられるとは思いもしなかったでしょうけれど、思いがけず娘さんへの贈り物を残すことになったのです。
相手の存在を感じられる手書き文字
この2つのエピソードはどちらも、手紙を書いた人は亡くなっています。生前大切に思われていた残された人たちにとって、実際にしたためた手紙が心の拠り所になったり、亡くなった人を実態として感じられるものとなっていることが興味深いですね。手からペンを通してインクに乗った思いが綴られている紙の実態感は、亡くなった人の存在そのものとなって、触れることのできるものとして残された人々と一緒に在ることが可能になるのです。こんなことができるのは手紙ならではでしょう。その素晴らしい力の一つなのです。
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