長い目で見る

練馬区立牧野記念庭園はのんびり歩いても10分もあれば一周できるぐらいの小さな庭園だ。でも、ぐるりと1周しただけでこの庭園のすべてを見た気になるのは早い。目立つものだけが見えるのが1周目だ。2周目には「あれ、こんな花も咲いてる!」 と、1周目に見逃した植物を発見するだろう。そして3周目になると、さっき目にしたものの中に気がつかなかったものを発見する。「一体私は何を見ていたんだろう?」と思うぐらい、それは目の前にある。目が慣れてくるというのかな。しっかり見えるようになるまでに、よく気がつくようになるまでには、少しだけ時間が必要だ。

1周目。オオバベニガシワの若葉が目に入る。きれいだなぁと見入る。これは成長していくうちに緑色になるそうだ。鮮やかな赤い色は若葉の時だけ。

2周目。なんだか実のようなものを見つける。あれ、さっきは気がつかなかった…。さらによく見ると実から細長い紐状のものが飛び出している。

実だと思ったのは雌花で、先端に出ている細長いものは花柱(かちゅう)といって雌蕊の一部らしい。

3周目。オオバベニガシワの枝の部分にキノコ状のものがたくさんついていることに気がつく。これは雄花で、その集まりのことを雄花序と呼ぶそうだ。

薄黄色のカエルの手みたいな形をしたものが雄蕊。

とまぁ、ここへ来るといつもこんな具合。「時間をかけないとちゃんと見えないよ。」人間の目とはそういうものだと教えれられている気がする。なにごともパッと見た一瞬で、わかった気になるのは危険だ。いい? 慌てず急がず。自然界の速度に身を委ねるの。そうすればおのずと見えてくるのに、面白いものや美しいものを易々と見逃してしまうなんて悔しいじゃない。目の前に厳然と存在しているのに! 牧野記念庭園で植物を観察すると身をもってそれを実感する。

おまけ。大好きなのに1周目で見つけた試しがない花・春蘭。


#牧野記念庭園 #自然観察

てがみまYukoのふみあかり

田丸有子。 手紙の書き方コンサルタント。 札幌出身、東京都在住。 情緒があるものやエレガントなものに惹かれる50代。 無類の手紙好き。L.M.モンゴメリの小説が愛読書。 すきな言葉は「雲心月性」。

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